「予防」と「対処」年代ごとの目的と狙い
「キャリア自律」は、年代ごとに相関関係があります。なぜ年代ごとにキャリア自律の状態が変わってくるのでしょうか。
労働人口の減少や働き方の価値観の変化によって、キャリア自律が求められる今の時代に、企業がキャリア自律の促進のサポートに取り組むことで、従業員自らが主体的に考え、学習意欲の向上や、ワーク・エンゲージメントが高まるなど、組織の活性化を期待できるメリットが多数あります。
ここでは、キャリア自律と年代との相関関係を俯瞰しながら、主体的なキャリア形成を支援するアプローチをご案内します。
キャリア自律と年代との関係 キャリア自律の実態を俯瞰する
従業員のキャリア自律に関する定量調査(パーソル総合研究所)によると、20代のキャリア自律度が最も高く、30代から40代にかけて下がっていくことがわかっています。
キャリア自律度/年代別
出所:パーソル総合研究所「従業員のキャリア自律に関する定量調査」
キャリア自律を構成する要素別にみると、多くの要素で低下傾向が見られ、なかでも「新しい人間関係が構築できるように、社内外の活動に積極的に参加している」や「仕事と直接関係ない人とも積極的に交流するようにしている」といった「ネットワーク行動」の項目が全年代を通じて最も低くなっています。
キャリア自律の諸要素実態/年代別
出所:パーソル総合研究所「従業員のキャリア自律に関する定量調査」
一方で、企業のキャリア開発/構築に関わる諸制度を年代ごとに見てみると、いくつかの問題点がみえてきます。
しばしば見られる問題点
出典: パーソル総合研究所作成
キャリア自律を低下させる要因としてみえてきたのは、まず、階層別研修や一部の選抜研修・管理職研修等の受講者以外、多くが研修・学ぶ機会から遠ざかり、自分自身のキャリアを考える・見つめ直す機会が無いまま年次を重ねること、つぎに、役職定年や定年再雇用などの後進の機会創出と総額人件費等の賃金コントロールを目的とした諸制度に合わせ、それらキャリアイベントを経た後の活躍のためのキャリア開発(スキルの見直し・アンラーンやリスキリング)と期待役割・職域の設定・開発が十分できていないこと、最後に、こうした状況下で急に・久々にキャリアを考えさせることでむしろモヤモヤや引退モードを引き起こすことです。
年代別施策の目的と狙い 年代ごとの課題解決で全体的な仕組みをつくる
各年代ごとにキャリア自律の施策を整理する理由は、その年代が直面する独自のニーズや課題に合わせる必要があるためです。
必ずしも年代ごとにカテゴライズすることが正しいということではなく、組織の状況や人事制度、企業風土、それまで培ってきた個人のキャリア感などによって醸成された「個々のキャリア自律の状態」に即した施策の設計が必要となります。
パーソルキャリアコンサルティングでは、年代ごとだけでなく、従業員満足度調査や、職位・職種など属性を組合わせて施策の全体像を描き支援しています。
年代ごとの施策例
20代
組織・仕事への適応
自分を客観的に見つめ、仕事の意味づけを促すことで、早期離職を抑制
これから先のキャリアの可能性を広げるために、自身が取り組むべきテーマを探ります。
ねらい
- 主体的な仕事への取組み・能力開発の素地を作る
- 期待役割と自己の伸びしろを認識する
対 象
入社3年目~30代前半
30代
責任範囲の拡大・仕事観の転換期
キャリアの方向性・専門領域の方向性を考え、組織から求められる期待と自身の役割を明確化
ここまで蓄積してきた経験を踏まえてキャリア形成の軸を探り、主体的に自身のキャリアをデザインします。
ねらい
- 継続的成長・自己の価値の向上の必要性を認識する
- キャリア自律意識・意欲を醸成する
対 象
30代全般
40代
同年代での役職・報酬の差
自分の強み・持ち味を確認し、今後発生するキャリア変化に備えて社内外の広い視野でキャリアデザインする
変化に柔軟に向き合えるよう自身のキャリアに対する視野・可能性を拡げ、40代としてのキャリアを新たにデザインします。
ねらい
- 環境変化のキャリアへの影響を自覚する
- 多様な選択肢への意識を持ち、自身のキャリアに対する視野・可能性を拡げる
対 象
30代中盤~40代全般
50代前半
役職定年前・キャリアゴールの意識
キャリアの方向性・専門領域の方向性を考え、組織から求められる期待と自身の役割を明確化
能動的な選択につなげるために、役職定年・60歳定年などの節目に向けて様々な角度からキャリアを再評価し、広い視野でビジョンを描きます。
ねらい
- 予見しない出来事への準備の必要性に気づく
- ライフキャリアの視点も意識してキャリアを再設計する
対 象
- 50代 管理職
- 60歳定年の節目がある50代
50代後半
役割転換・定年後の生活への準備
再雇用前後での仕事・役割の変化に備え、今後のライフキャリアを考える
継続再雇用・65歳定年など、引き続き組織での活躍が期待される一人ひとりが、セルフモチベートポイントを探り、自身のキャリアを展望します。
ねらい
- 学びの継続意欲を持ち、貢献領域を広く検討する
- ライフキャリアの視点も意識してキャリアを再設計する
対 象
役職定年や60歳定年の節目がなく継続雇用予定の50代