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キャリアコンサルティングの機会確保を求める
「職業能力開発促進法」の改正

2022年3月30日、参院本会議における「雇用保険等の一部を改正する法律案」の成立に伴い、職業能力開発促進法が改正されました。

その中では、事業主によるキャリアコンサルティングの機会確保の責務が強化されるなど、労働者のキャリアアップや職業能力開発を促進する改正が図られています。急速なデジタル化の進展や、非正規労働者のスキル習得やミドルシニアの学び直しといった労働分野の課題に対応することが目的です。

改正法の施行により、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。本記事では「そもそも職業能力開発促進法とは」といった基礎知識や改正法の内容を解説します。

職業能力開発推進法と、その改正の背景

職業能力開発促進法は「職業に必要な労働者の能力を開発し、及び向上させることを促進し、もつて、職業の安定と労働者の地位の向上を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与すること」を目的として、都道府県や事業主などに、職業訓練や職業能力検定の充実や労働者の教育訓練の機会確保などを求める法律です。1958年に「職業訓練法」として施行され、1985年の改正で現在の名称に変更となりました。以降も2001年、2006、2016年など、複数回の改正が行われています。

では、今回の改正法はどのような内容なのでしょうか。改正が図られた背景には、新型コロナウイルスの感染拡大や、それに伴うデジタル化の加速など、急速かつ広範な社会・経済の変化があります。こうした変化の中で、宿泊業や飲食サービス業、製造業などの産業では非正規雇用労働者が減少するなど、労働市場には大きな影響が及びました。

それと同時に、2022年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(通称「骨太の方針」)」では、リカレント教育の推進や非正規雇用労働者などのスキル習得、ミドルシニア人材のキャリアの棚卸、キャリアコンサルティングの支援強化など、昨今の急速な労働市場の変化に対応するための「学び」の重要性が強調されています。

こうした状況を受け、改正法では、労働者が自律的・主体的に学び直しに取り組み、スキル・キャリアを向上させていく「学びの好循環」を生み出すため、キャリアコンサルティングや地域のニーズに対応した職業訓練の推進が図られることとなりました。

主な改正の内容3点

今回改正された内容のうち、大きな変更点は以下の3つです。その具体的な内容を見ていきましょう。

キャリアコンサルティングの機会の確保(2022年4月施行)

事業主による、労働者の職業能力開発に関する措置を定めた職業能力開発促進法 第10条の3が、以下のように改正されています。

 

[多様な職業能力開発の機会の確保]
第十条の三 事業主は、前三条の措置によるほか、必要に応じ、次に掲げる措置を講ずることにより、その雇用する労働者の職業生活設計に即した自発的な職業能力の開発及び向上を促進するものとする。
一 労働者が自ら職業能力の開発及び向上に関する目標を定めることを容易にするために、業務の遂行に必要な技能及びこれに関する知識の内容及び程度その他の事項に関し、情報を提供すること、職業能力の開発及び向上の促進に係る各段階において、並びに労働者の求めに応じてキャリアコンサルティングの機会を確保することその他の援助を行うこと。
二 労働者が実務の経験を通じて自ら職業能力の開発及び向上を図ることができるようにするために、労働者の配置その他の雇用管理について配慮すること。
2 事業主は、前項第一号の規定によりキャリアコンサルティングの機会を確保する場合には、キャリアコンサルタントを有効に活用するように配慮するものとする。
※太字は新設部分

 

改正法では事業主に対し、職業能力の開発に関するあらゆる場面でキャリアコンサルティングの機会を確保し、提供するように促す内容が追記されています。

さらに、これに加え「事業主は(中略)キャリアコンサルティングの機会を確保する場合には、キャリアコンサルタントを有効に活用するように配慮するものとする」とあるように、キャリアコンサルタントを積極的に活用するような条文も追加されました。

国や都道府県などによる労働者への配慮(2022年4月施行)

第18条3には、国の都道府県、市町村が職業訓練を実施するにあたっての配慮義務が新設されました。

 

[国、都道府県及び市町村による配慮]
第十八条 国、都道府県及び市町村は、その設置及び運営について、公共職業能力開発施設が相互に競合することなくその機能を十分に発揮することができるように配慮するものとする。
2 国、都道府県及び市町村は、職業訓練の実施に当たり、関係地域における労働者の職業の安定及び産業の振興に資するように、職業訓練の開始の時期、期間及び内容等について十分配慮するものとする。
3 国、都道府県及び市町村は、職業訓練の実施に当たり、労働者がその生活との調和を保ちつつ、職業能力の開発及び向上を図ることができるように、職業訓練の期間及び時間等について十分配慮するものとする。
※太字は新設部分

 

「労働者がその生活との調和を保ちつつ、職業能力の開発及び向上を図ることができるように」とあるように、労働者が今の仕事や生活と平行して職業能力の開発ができるよう、十分な配慮をするような文言が追加されています。

協議会の設置(2022年10月施行)

職業訓練に関する事務や事業を行う国や都道府県の機関には、地域の実情に沿った職業訓練やキャリア支援を行うため、「協議会」の設置が認められました。

 

[協議会]
第十五条 都道府県の区域において職業訓練に関する事務及び事業を行う国及び都道府県の機関(以下この項において「関係機関」という。)は、地域の実情に応じた職業能力の開発及び向上の促進のための取組が適切かつ効果的に実施されるようにするため、関係機関及び次に掲げる者により構成される協議会(以下この条において単に「協議会」という。)を組織することができる。
一 第十五条の七第三項に規定する公共職業能力開発施設を設置する市町村
二 職業訓練若しくは職業に関する教育訓練を実施する者又はその団体
三 労働者団体
四 事業主団体
五 職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第四条第十項に規定する職業紹介事業者若しくは同条第十一項に規定する特定募集情報等提供事業者又はこれらの団体
六 学識経験者
七 その他関係機関が必要と認める者
※上記は新設部分の一部

 

協議会は「市町村」「職業訓練を実施する団体等」「労働者団体」「事業者団体」「職業紹介事業者等」「学識経験者」などで構成される都道府県単位の組織です。地域の教育訓練の受給や実施状況などを考慮し、訓練コースの設定や職業訓練の検証などを行い、職業能力開発の促進や向上に努めるとされています。複数の組織が一体となり、その地域の職業能力開発がより促進・向上する取り組みが期待されます。

まとめ

今回は、職業能力開発促進法の改正に伴う主な変更点である、キャリアコンサルティングの機会の確保、国や都道府県などによる労働者への配慮、協議会の設置について紹介しました。
改正法の中で企業が注目すべきなのは「キャリアコンサルティングの機会の確保」でしょうか。

もともと、職業能力開発促進法第4条第1項には「事業主は、その雇用する労働者に対し、必要な職業訓練を行うとともに、その労働者が自ら職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受ける機会を確保するために必要な援助(中略)を行うこと等によりその労働者に係る職業能力の開発及び向上の促進に努めなければならない。」と定められており、企業は労働者の職業能力開発についての責務を負っています。

一方で、少子高齢化や人口減少、急速なデジタル化の進展など、企業を取り巻く課題は少なくありません。そうしたなかで、キャリアコンサルティングを通じて従業員が自身の現状を正しく認識し、ありたい姿や価値基準を元に仕事内容や行動計画を見直すことは有効です。労働者が自らの意思と責任で行動する重要度は増していると言えるでしょう。今回の改正法の施行は、企業におけるキャリアコンサルティングに、さらに大きな変化をもたらすこととなりそうです。

(出典)
・厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要
・厚生労働省 職業能力開発局「職業能力開発関係資料集
・厚生労働省 労働政策審議会人材開発分科会「人材開発分科会報告(骨子案)
・厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律案新旧対照条文

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