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「シニア人材」の活性化を考える

生産年齢人口の中核を占めるミドル・シニア世代の活性化は、社会においても企業においても重要なテーマになってきました。 シニア人材の経験と知識の豊富さ、若手世代へのナレッジトランスファーとしての役割、組織文化の維持などシニア人材の活躍の重要性は増しています。 一方で、これらシニア人材の活躍には幾つかの課題が絡み合い、その促進は容易でない現状も見て取れます。 ここではシニア人材の課題に対して、シニア人材の職務イメージを理解しながら「キャリア自律」「キャリア選択」の両面のサポート、さらに「対話」や「育成」という観点からのキャリア自律促進についてご案内いたします。

シニア人材の活性化を阻む課題 01 施策のハードルの高さ

そもそもシニア人材には、リスキリングの難しさや、定年後の業務・ポスト確保の問題、企業経営課題・人事課題のプライオリティの低さなどといった課題が存在し、これらが施策のハードルを更に高くしているといえます。

01リスキリングの難しさ

●50代以上にもさらなる活躍を期待したいが、 IT業界における技術面でのリスキリングのハードルの高さ
●また、会社としても社員に同じ仕事をさせてきたため、今更新たなスキル装着は難しい

02定年後の業務・ポストを確保することが困難

●技術革新が進む中、これまでお願いしていた仕事自体が無くなる
●今後ポストがどんどん狭まるため、いざポストがなくなった時に仕事のアサインが困難に
●定年後に仕事内容が変わった際、適応ができないと危惧

03経営課題の優先度が低い

●比較的に平均年齢が若い会社が多いため、シニア課題が検討テーマとして挙がりにくい
●人材確保や新事業の遂行が優先課題であり、ミドルシニア層に関して経営課題となるのは実際に問題が発生し始める5~10年後に

シニア人材の活性化を阻む課題 02 複数の要因が影響しあい課題が増幅する

シニア人材の課題は、単一の要因からなるものではなく、外的・内的さまざまな複数の要因が影響しあって課題が増幅していきます。
増幅した課題の中にある一つひとつの要因を紐解いて行くことがシニア人材課題を理解するポイントとなります。

不活性 ●モチベーションの低下
●パフォーマンスの低下
・設定後の意欲低下に代表されるモチベーションの低下
・経験・スキルの陳腐化等による職場内でのミスマッチ状態
・いわゆる社内失業状態に繋がる状態
生産性 ●Job パフォーマンスと
 報酬の不一致
・現在のJOBや成果貢献度合いと報酬が見合っていない状態
(職能等級制などの人事制度も大きな要因)
職域開発 ●職域の不足・配置の難航
●余剰と不足の同時拡大
・テクノロジー活用や事業変化に伴う絶対数の不足
・必要となる人材要件との不一致による配置難航
組織影響 ●マネジメント負荷
●若手・中堅への影響
・不活性状態や生産性不一致な状態のミドル・シニア層に対する
マネジメント負荷の増大や周囲のモチベーションダウン

シニア人材の理解 01 シニア人材の「キャリア自律」

シニア人材向け施策の実施対象年齢を見ると、キャリアプランニングが50代前半、ポストオフは55歳以上で急増。60代はすべての研修・施策が急減しています。企業におけるスキルアップ研修は若年層を中心に行われていることが実情です。また、再雇用後の処遇低下に対するシニア人材の意識として、定年後再雇用者の実に30%以上が、処遇低下を「仕方がない」と諦めていることがわかってきました。

シニア人材向け施策の実施対象年齢(%)

役職定年制度は55代以降で増加。研修やカウンセリングの機会は50代以降減少

出所:パーソル総合研究所「企業のシニア人材マネジメントの実態調査」

Q. 会社の今後を考えると、年齢によって、自分の処遇が低下するのは仕方ない

フルタイム31.5%、パートタイム31.9%、嘱託契約36.9%が仕方ないを選択

出所:パーソル総合研究所 「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」

シニア人材の理解 02 シニア人材の職務イメージを理解する

シニア人材が自律的・自発的に行動するためには、シニア人材自身が、新たに活躍・躍進できる職務は何なのか、シニア人材側と企業側双方とがそれぞれに描く職務イメージをすり合わせて行く必要があります。

ジョブ(職務)

ミッション / ロール
(役割)

  • スペシャリスト型

    高度専門人材として継続して専門分野で働く。
    研修講師・専門職種・研究員など

  • ワークシェアリング型

    既存業務を分割・切り出した職域で働く。
    ベアワーク、 短時間シフト制などによる業務の分担など

  • サポート型

    各事業部における定型的なサポート業務を行う。
    外部委託していた定形業務の再取り込みなど

  • メンタリング・コーチ型

    メンバー育成補佐・マネジメント補佐業務を行う。
    社内キャリアカウンセリング業務、メンター業務、コーチングなど

  • 特別業務型

    それぞれのビジネスで発生する個別の特定業務を担う。
    新規事業メンタリング、カスタマーサポート、アフターサービスなど

出所:パーソル総合研究所作成

シニア人材への対策:テーマ 自律意識の醸成と選択肢の拡充

シニア人材の活性化を阻む課題は、外的・内的さまざまな方面からの要因が複雑に絡み合っています。
その中でも主体的なキャリア形成を支援する仕組みや機会提供と共に、自ら考え、描いた未来・キャリアに向けて、社内/社外を含めた選択肢・挑戦機会をつくるアプローチが重要となります。
シニア人材に対しても主体的な自己決定感あるキャリアにむけ、キャリアオーナーシップを育むことが大切です。

キャリア自律意識の醸成

キャリアを主体的に考える

  • 定年後の働き方を今から真剣に考えなければ
  • シニアになったらどんな仕事になるのかな・・・
  • 40代・50代今のうちからできることはなんだろう

キャリア選択肢の拡充

描いた未来に向けキャリアを選択する

  • 社内再雇用が本当に自分の望む働き方なのか?
  • 定年後に転職し、新しいセカンドキャリアを描く?
  • 社内で新しい仕事にチャレンジできる仕組みはあるか

シニア人材への対策:予防 若い世代からキャリア自律の醸成を

将来起こりうるシニア課題に対して、今から手を打ち、若い世代がキャリアへの変化適応力を身につけシニア期を迎えることが大切です。
ではどのように変化適応力を高めていけばよいのでしょうか。昨今のキャリア自律促進は、「啓発活動やロールモデルなどに頼りすぎている」と私たちは考えます。なぜならロールモデルと自分とに距離があると、お手本は影響どころかむしろネガティブ要因になり得るからです。
キャリア自律は「会社側が用意した啓蒙的な意識改革」ではなく、「個が自ら育むもの」と捉え、キャリアの節目や個のキャリア自律の状態にあわせて、対話をもって組織が個人を支援する必要があります。

ミドル・シニアになるまで

ミドル・シニアになってから

  • 20
  • 30
  • 40
  • 50
  • 60

キャリアの変化適応力を身につけてミドル・シニア期を迎えること

ミドル・シニア課題を再生産しない「予防」が重要に

シニア人材への対策:対処 シニア世代の具体的な行動の足掛かりをつくる

「リスキリングの難しさ」にも示したように、職種や企業に適応すればするほど「思考のクセ」が生まれ、従来の考え方に縛られてしまいます。シニア人材が活躍するためには、これまでの経験やスキルを活かして、新しい仕事や場所でも活躍できるのだと自信を持ってもらうことが必要です。
そのために、キャリアを考える機会やキャリアの選択についての全体像を描き、施策の連動性をもってキャリア形成を支援することが大切です。

上司の支援、自律支援と選択支援の両面で年代ごとに取組みを可視化する

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